2016年度、タイのパーマカルチャーファーム、サハイナンでの滞在。
この日は、数あるサハイナン滞在の中でも、非常に思い出深い日です。
山から木を切ってきて、その木で家を建てたい。
その夢がかなったと同時に、木を切って運ぶ現実の過酷さを知った日でした。
相変わらず、自分主導での家づくりが続いています。
現在は柱が6本立ったのと、二階のフロアができている状態です。
次はこの柱に、梁を渡さなければいけません
(梁を渡すっていう表現はあってるのかな?
建築は専門ではないのでよくわかりません)。
その辺にある木や竹で作るナチュラルビルディングでは、
建築資材集めが最難関だと感じています。
日本でモバイルハウスを作った時は、
お金は必要ですがホームセンターでいい資材がたくさん買えます。
でもここでは、建築に使えるいい木や竹は意外と簡単には手に入りません。
しかも山の中なので、車が使えない場合は人力運搬です。
自分は見た目もやせっぽちではっきり言ってひ弱な方だと思います。
だから重いものは本当に苦手。
重いものを2人で運ぶ時とかは、
いつも相手のペースについていけず相手に申し訳ない気持ちになってしまいます。
でも今日はついにこの日がやってきてしまいました。
建築資材を山へ取りに行くのです。
ありがたいことに、近所の地元山岳民族のおじさん(60歳ぐらいの人)と、
サハイナンに宿泊している旅行者の女性3人が手伝いにきてくれました。
というわけで、例によってこんな感じの山に入っていきます。
10分ほど山道を歩いていい木が生えている現場に到着。
助っ人のおじさんがいきなりナタで木を切り始めます。
ものの3分ほどで、1本目の木が倒れました。
そしてサンドットさんが自分に一言。
「カット!(切れ!)」
え、具体的な指示もなくいきなり切れと?
よくわからないまま、初めての木の切り倒しです。
斧で何度も木をチョップします。
やりながら、サンドットさんが色々と教えてくれます。
しかし、自分のたどたどしい動きを見かねた助っ人のおじさん。
おじさんが手を出すと、今まで悪戦苦闘していたのが、ものの10秒で切れてしまいました。
さすがです。
切れた後は、木の皮むきです。
これはかなりおもしろい作業でした。
根っこの方から切り込みを入れると、先の方に向かって、
木の皮がつるりんと気持ちよくむけていきます。
こうして12本ほどの木材ができあがり、いよいよ地獄の運搬作業。
大きいものだと10メートル弱、推定70キロほどの木材。
ここでもスーパー助っ人のおじさんは、驚異的な力を見せつけます。
その大きな木材を、なんと1人で運ぶのです。
信じられない光景でした。
自分は2人で運んでもヒーヒー。
強くなりたいなぁ。
いや、強くなるにはやってみるしかないんじゃないか?
ということで、ちょっと無理して小さめの木を1人で運んでみました。
もちろん重いですが、2人で運ぶよりも自分のペースでゆっくりいけるのはやりやすい。
どうにかこうにか一本を1人で運びきった時は、なんだか強くなったような気がしました。
そんな感じで12本の木材を一旦ある地点まで運びました。
と言ってもまだまだ建築現場までは、谷を越えて山を越えなければいけません。
下り坂だから少しはマシだけど、けっこうな急坂です。
ここを降りるのかー、滑ってケガしそう。
と思っていると、サンドットさんとおじさん、坂の下に向かって木材を押し出します。
なんと、重力利用です。
急な坂を滑らせての移動。
おー、これは楽だし楽しい。
無事、午前は谷の下まで到着しました。
お昼を食べながら午後の予定のお話。
今日は、新しい滞在者がくるから、サンドットさんは街へ迎えにいく。ふむふむ。
サンドットさん「せっかく街に行くから、他の人も行くかい?」
ほかの人たち「いくいくー。」
サンドットさん「だけど助っ人のおじさんは午後も一緒に作業してくれるから、
ユーキ、残っておじさんと一緒に作業しててくれ。」
自分「ぎょえー!」
おれ1人とおじさんだけかー。
木材12本の山登りを、2人でかー。
しかもスーパー助っ人のおじさんは、生粋のタイ人。
英語が全くわからない。
共同作業するのに、それでだいじょぶか?
まあ、ちょっとお昼休憩して、体と心を落ち着けてからやるとしよう。
え⁉︎おじさん、もうスタンバイできてて、やる気満々⁉︎
すみません、15分だけ休ませてください。
ということで大した休みもとれないままに谷底へ集合。
これが谷底から見た風景。
山の上の方に見える家のあたりが、建築現場まで3分の2ぐらいの地点。
まずはさっき持つことができた木材を1人で担いでみる。
お。意外と持てるぞ。
と思ったのもつかの間、上り坂を一歩登るたびに木材がどんどん重く感じてくる。
途中で挫折。休憩。
これを何度も繰り返す。
その間にご近所さんは、いいペースで運び出す。
うーん、ごめんなさい。そんなに早くは運べません。
そして、2人でしか運べなさそうな大きな木材が残り、それを2人で運搬。
言葉の壁に不安を感じつつも、身振り手振りと片言のタイ語でコミュニケーション。
なんとか少しずつ運びつつも、すぐに自分が休憩を申し出てしまう。
しかしそこは、心のやさしいタイの人。
自分が充分に休み終えるまでは、ずっとやさしい雰囲気で待ってくれている。
その間、会話はほぼなし。
無言の時間が続くけど、不思議と居心地の悪さはほとんどなし。
そのおじさん、「しょうがないなぁ」というやさしい気持ちで、
ぼくの体力回復を待ってくれているからでしょう。
ほんとに心やさしいなぁ。
そんなご近所さんのやさしさとハイパワーで、
なんとか全ての木材を山の上の建築現場まで運搬完了。
終わってみれば、12本を運び終えるのにかかった時間は2時間程度。
ものすごく疲れた割には時間はそれほど経っていない。
やる前は、全くできる気のしなかった木材運搬。
しかし午後は2人でやり切ることができた。
とにかくやりきったことで、
木材を運ぶことは可能だという感覚を身につけることができた。
なんか壁を一つ乗り越えられたような気になりました。
うん、明日からはまた建築が進むかな。
そして、少しは強く、なれたかな。
(この記事は、2017年1月23日のブログを再編集したものです。)
暮らし自体が、仕事で遊びで学びである
というライフスタイル「遊暮働学(ゆうぼどうがく)」。
自然の中から材料を調達して家を作るという、まさに遊暮働学の極みといった一日でした。
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