そんな疑問にお答えします。
■目次
1. 協生農法とは
協生農法とは、生産性と環境破壊のトレードオフからの脱却を目指した新しい農法です。
ていうのが一般的な説明らしいですが、この時点で既にわかりにくいですよねw
「トレードオフ」っていうのは、二つあるうちの一方をとれば、もう一方が犠牲になる、という状態です。
現代の農法が、生産性を重視して農薬・化学肥料を使うと、環境破壊につながってしまうという意味ですが、協生農法はこの問題を解決できる農法、ということです。
どうしてそのようなことが可能なのか、見ていきましょう。
1-1. 協生農法での基本的な考え方
協生農法では、自然の野山、循環の力を利用して、作物が育ちやすい環境を整えていくことを考えます。
農作物が育つのであって、育てるわけではない。
育つのは、タネや苗の力であって、肥料で肥大させるわけではないという考え方です。
「植生遷移」という現象がありまして、これは、荒地が緑化していくときの流れで、一年草→多年草→宿根草(しゅっこんそう)→小低木→中低木→高木と、徐々に回復していきます。
協生農法では、この植生遷移のメカニズムを利用しています。
そして協生農法を特徴づける、次の4つのポイントがあります。
- 畑に木(果樹など)を植える
- 無農薬
- 無肥料
- 不耕起
1-2. ポイント① 畑に木を植える
これは、協生農法最大の特徴的なポイントでしょう。
畑に木が植わってたら、日陰ができて作物が育たないじゃないか、と思います。
しかし協生農法では、自然の野山(植生遷移の仕組み)をモデルにしています。
実際、自然の野山は、たくさんの木があって日陰もたくさんありますが、山に入ってみれば、木だけではなく豊富な植物が育っていますよね。
木は、秋になると葉っぱを落とし、それらを虫や微生物が分解してくれることで、常に腐葉土を作ってくれる重要な役割も果たします。
1-3. ポイント② 無農薬
自然のメカニズムをモデルにしますので、当然、自然界にはない農薬は使用しません。
協生農法では、虫も、作物が育ちやすい環境をつくる重要な役割があると考えます。
1-4. ポイント③ 無肥料
そもそも肥料とは、植物が育つのに必要な栄養の三要素、チッ素・リン酸・カリを効率よく与えるためのものです。
この三要素は、自然界の循環の中でも作られますから、協生農法では、この自然界の循環が起こりやすい環境を整えることで、肥料を与えなくても作物自身が育っていくという考え方をします。
1-5. ポイント④ 不耕起
そもそも土を耕起する(耕す)のは、土を柔らかくして植物が育ちやすくするためですが、協生農法ではこの土を柔らかくする仕事を、草(いわゆる雑草)の根や土中の微生物にやってもらうため、不耕起で行います。
2. 有機農法、自然栽培などとの違い
この説明を聞くと、いわゆる「有機農法」や「自然栽培」と何が違うのだろうと疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。
2-1. 有機農法との違い
協生農法では肥料を与えないのに対し、有機農法では基本的に、有機肥料を与えます。
ですから、無肥料であるという点で、有機農法とは異なります。
2-2. 自然栽培との違い
自然栽培全国普及会によれば、自然栽培とはこのように説明されています。
「自然栽培」とは自然の力をいかんなく引きだす永続的かつ体系的な農業方式の呼称です。肥料・農薬には頼らず植物と土の本来持つ力を引き出す農業です。
自然栽培全国普及会HPより
この説明によれば、協生農法では、無農薬・無肥料・不耕起という点で、自然栽培の一種と分類されそうです。
しかし協生農法には、もう一つの大きな特徴、木を植えるという点があります。
同じ自然栽培でも木を利用する自然栽培、利用しない自然栽培があるでしょうから、「協生農法は木を植えるという特徴のある自然栽培の一種である」と言えるでしょう。
記事公開後、一般社団法人シネコカルチャー(協生農法についてのウェブサイト)に、Q. 「協生農法は木を植えるという特徴のある自然農法の一種である」と言えるでしょうか?についての見解が示されましたので、より深く学びたい方はそちらもご覧ください。
3. 協生農法の始め方
協生農法を始めたい場合、今まで作物を作っていた耕起地の場合と、何年も工作を放棄した耕作放棄地(もしくは荒地)の大きく二つの場合にわけて考えられます。
3-1. 耕起地の場合
耕起地の場合、通常はそれまでに使ってきた肥料分が蓄積されています。
協生農法に必要なのは、樹木ですから、まずは木を植えます。
通常、苗木はなかなか育ちにくいですが、蓄積された肥料分があるのでそれを吸収しながら協生農法の必須要素である木が育ってくれるでしょう。
3-2. 耕作放棄地の場合
耕作放棄地というと、イメージがあまりよくないですが、協生農法においては、実は、耕起地よりも条件がいいと考えます。
その理由は、先に述べた植生遷移の現象です。
植生遷移では、一年草から始まり、多年草、宿根草を経て木が生えてきて、緑地に戻っていきます。
そういう意味では、耕起地というのは植生遷移から見ると、もっとも緑地からは遠く、荒地の方が緑地に近いということになります。
荒地で協生農法を始める時は、同じく木を植えることになりますが、既に生えている草たちも、作物が育ちやすい環境を整えていく上で助けになるでしょう。
3−3. タネの蒔き方
基本的には、あらゆる種類のタネを混ぜて、耕作地にばら撒きます。
協生農法では、虫、植物、作物、鳥、樹木など、あらゆる生物の多様性によって作物が育つのを待ちます。
ですから、通常の発想のように、トマトを食べたいから、ここはトマトのスペースと、作物ごとに分けて植えるのではなく、バラバラにタネを撒いて、できた作物を食べる、という発想になります。
4. 協生農法が世界を救う!?
今、世界各地で、砂漠化や飢餓、貧困などの問題が発生しています。
協生農法を推進するソニーは以前、西アフリカの内陸国ブルキナファソでの実証実験で、砂漠をわずか1年で緑のある土地に変えた実績があります。
そういった砂漠から食料が得られるようになれば、その地域に住む人たちの飢餓、貧困も同時に解決できる可能性があります。
土壌を復元させながら、同時に食の恵みを得る協生農法、世界の砂漠化や飢餓、貧困などの問題解決のきっかけとなるかもしれませんね。
5. 協生農法における考え方
ほかにも協生農法では、現代の農業の常識とはかなり異なる考え方もするようですので、ここに一部を紹介します。
5-1. この場所にトマトを実らせたいという思いが不自然!?
本来、自然は、その場その場に適した場所に、適した植物が生えるので、ここにこの作物がほしいという人間の思いは、そういう意味では自然ではないとも言えるでしょう。
ほしいタネをたくさん混ぜてばら撒いて、出てきた食べられる部分を食べるという方が、より自然に近い考えでしょう。
5-2. 混成、密生が基本
通常の農法では、トマトの列、ナスの列など、作物別にわけてタネを蒔きますが、協生農法では、混ぜて植えること、しかも密に植えることが基本になります。
それは、表土を植物で覆い尽くして、土を裸にしないためです。
表土がむき出しの裸の土というのは、砂漠の状態に似ていて、微生物も活発に活動ができません。
5-3. 「雑草」もスタッフの一員
協生農法では、雑草も作物が育ちやすい環境を整える役割を担っていますから、基本的には雑草は除去しません。
5-4. 超長期的視点を持って始めましょう
ここまで説明してきて、少しでも農に携わった経験がある方ならば、
「それで作物ができれば苦労はしない」
という感想をお持ちのことでしょう。
はい、私もそう思いました。
通常は、その年に食べる作物を得るために、農を行います。
しかし、協生農法では、数年先の作物を、少ない労力で、かつ環境に優しい形で得ることを目指しているため、直近の一年二年で見ると、なかなか収穫が上がらずに悩むことでしょう。
でも数年〜10年単位で見れば、除草剤を使う手間、肥料をあげる手間、耕す手間、雑草をとる手間などが必要なくなって省力化になる上、何よりも地球環境にやさしい農法です。
興味のある人は、ぜひ長期的視点に立って挑戦してみてください。
6. 最後に
と、さも協生農法を知ったような書き方をしてきましたが、つい先日までは、協生農法の「きょ」の字(「き」の字?)も知りませんでした。
たまたま、協生農法に詳しい方とのご縁があって、その方にマンツーマンでたくさんの質問をさせていただき、それに対して一つ一つ丁寧に答えていただきました。
そして協生農法の素晴らしさに感化されて、忘れないうちに記事をまとめようと思って今、この記事を書いている次第です。
少ない知識で書いたために曖昧な点、間違った点もあるかもしれませんが、問合せやコメント等で教えていただければと思います。
最後に、ぼくに協生農法を教えてくださった方のブログをご紹介します。
管理人の麦わらどんぐりさんは、協生農法の理論はもちろんのこと、ご自宅の畑でも協生農法を実践されていて、ブログでは畑の様子などを写真付きで詳しく紹介されています。
ぜひ、ご覧になってください!
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